プロローグ Part3

エルト王国はヴィスト王国との長期にわたる戦争をしており、現在は領土の半分を失っている。

領土の半分を失うということはほぼ敗戦を意味している。
最悪、内乱により国が崩壊する場合もあり得る。
俺がいた神楽家領国でもそのようなことがあっただけに経験による裏づけも万全だ。
エルト王国にとっては嫌な裏づけにしかならないだろうがな。

ただ、ヴィスト王国は領土の拡大に伴い多数の国家と交戦をしている。
その為、ヴィスト王国は慢性的な人員不足という問題に直面もしている。
それは戦力面に限らず、内政面でも言える状況なのだ。
それがあるからこそエルト王国はまだ王国として維持していられるとも言えるのだが。

俺たちは牢から出た後、小さな風呂のある部屋で身体を洗うことを強要された。
さすがに10日も牢に放り込んでいたのだから、それなりの臭いがしたんだろう。

ア:そりゃ臭うわよ、生臭い臭いがね。

……

………

まぁ、10日も牢に放り込まれていた間に毎日毎日複数回ヤッていたのだから臭うのも仕方が無いか。
身を清めた後は食事が並んでいた。牢屋に居るときとのギャップが凄い料理だった。
それらを美味しく頂いた後、今居る部屋に案内された。
案内されてから1時間、確かに牢屋に居た10日に比べたらかなり短い時間だが待たせすぎだ…

八:主人様、とりあえずヤりますか?

と、八重は俺の顔ではなく下半身を見ながら言ってきた。
ふむ、待たされている間は暇だし、食後の運動としてもいいな。
俺はあっさりと了承の意を伝えた。ただし……
「俺が上で、目隠し&縛り希望」
という条件をつけて。

八:大丈夫です、既に用意してあります

さすがは俺のことをよく理解している。
俺は八重を褒めてやりながら服を脱ぎ始めた。するとその時…

ア:私が来るのを見越して言ってるの?服を着なさい!

と、アルイエットが扉を開けると同時に怒鳴りつけてきた。

???:見越してやっているのじゃろう、待たせたのはこちらだから許してやれ。

と、一緒に入ってきた背の低い女がそういってアルイエットを宥めた。
ふむ、先方の合意も得られたしヤるかと、服を脱ごうとしたのだが……
「……なんだ、今度は堂々と見ようってハラか?」

ア:違うわよ!許すって言われたのはそっちの意味じゃないわよ!

もちろん解っている、解りやすいほどに単純なヤツだな。
ところで、あの小さな女は何者だ?。

八:エルト王国の内務大臣、ムスト様です。

さすがの俺もコレには驚いた。
エルト王国が諸国に誇れる要人の一人であるムストがこんなロリッ娘だとは…

ムスト(以降『ム』):知られておるとは光栄じゃな

名前だけだがな、知っているのは。
だからこそこの容姿に驚いたのだが。
なんせムストの名での活躍は200年を超えて聞かれている。
世襲しているのか、長寿系の種族の血を引いているのか、魔法による老化防止かは知らないが。

アルイエット アルイエット

 エルト王国軍総大将。
 総大将であった亡き父であるアルバーエル将軍の跡を継ぎ、軍を率いる事になったが、
 以前は普通のお嬢様だっただけに軍事面の素質はあるようだが完全な経験不足。
 彼女が総大将になってからは領土を失い続けている。
 現状では「お飾り将軍」としか言いようがない

ムスト ムスト

 エルト王国が周辺諸国に誇れる程の実力を持った内務大臣。
 国の行く末を案じる良識派で、現在は外交も担当している。
 エルト王国が維持されているのは、見た目は小さくとも存在が大きい彼女がいるから
 と言っても決して過言ではない。

ム:まぁ、外見は気にするな、重要なのは中身じゃろ?

「俺は女性には外見も気にするぞ?中身も膣内も気にするが」

ム:噂通りの男じゃな。さて早速じゃが…

「お前とアルイエットも含めて4Pでもしようってのか?」
と言いかけたが、アルイエットのヤツが剣の柄に手を掛けたので止めた。
そしてムストが手を叩くと控えていたメイドが4〜5人やってきた。
「なんだ4Pじゃなく乱交パーティーだったのか」
と言いかけたが、アルイエットのヤツが剣を抜いたので止めた。
入ってきたメイドたちはテーブルをセットし、話し合いの場を作ると退出していった。
要は本題に入ろうと言うことなのだろう。
アルイエットが牢で言っていた『呼ばなければならない人』がこのムストだというのはムストが
アルイエットと共に部屋に入って来た時に気付いてはいたがな。

ム:お主に依頼したい事があってな。こうして赴いてもらった次第だ。

赴いたと言うよりも、拉致監禁と言っても過言ではないと思うのだが?
それに、こうも素直に「依頼がある」と言われた事に意外な感じを受けた。
それならばなぜ牢屋に10日も放り込まれていたのか理由がわからないからだ。

ム:それについては詫びるしかないの。

ムストが言うには
・俺が本物かどうかを見極める時間が欲しかった。
・所用で城を離れていた。
・俺との接触を公にしたくはなかった
など様々な理由があって10日ほどを要したと言うのだ。
まぁ、それならば仕方が無いと割り切ることにした。話の辻褄はあっているし裏も感じられない。
「それで、俺に依頼ということは軍事関係だな?」

ム:無論そうじゃ。それ以外に何が考えられる?

自分で言うのもアレだが、何も考えられないな。
それからはエルト王国の現状やアルイエットの事を知っているかなどの質問を受けた。
この辺の情報は牢に居る間に八重から情報を得てもいたので問題はない。
アルイエットは勇猛果敢と近隣諸国にも名を馳せたアルバーエル将軍の娘だ。
俺も傭兵として将軍の下に居たこともあるから将軍の事は知っている。
将軍は『人のいいおっさん』だったのだが、残念なことにヴィストの交戦中に戦死してしまった。
本来なら世襲するものではない総大将の称号を彼女が継いでいるのも故人の実力と人望があったから。
まぁ、ぶっちゃけて言えば兵士の士気を維持したいがために祀り上げられた「お飾り将軍」だ。

ム:それだけ知っておれば良い。お主に頼みたい事とは…

俺は思わず自分の耳を疑った。
アルイエットの補佐役をして欲しいというのが依頼内容だったからだ。
だが、今までにもアルイエットの補佐は居たはずだ、なぜそこに俺を入れようとするのか理解できない。

ム:やつらは軍の補佐だ。お主には個人の補佐を頼みたいのじゃ。

なるほど、それで話は理解できた。
要はアルイエットという『被り物』をして軍を指揮してくれ、つまりはそういう事だ。
俺が出した指示をアルイエットの口から兵士や将軍たちに伝えさせるということだ。
ムストは「(俺に)全軍を任せても良いがアルイエットも将軍として立てろ」と言ってきた。
ただの影武者であれば何も出来ない地位ではあるが、こう言われると俺とムストの利害が一致しているのが
はっきりと理解できた。
俺の知名度が上がりすぎたことによって俺が仕官することでその国家はヴィストから注視される事になる。
俺が一国に留まらずに対ヴィスト王国の国々を渡り歩いたのはそこに起因するものだからだ。
アルイエットの影をやることで前面にはアルイエットの名前が出ることになり、俺の名前は出ない。
暫くするとバレる可能性は否めないが、当面の時間稼ぎにはなるだろう。
報酬としてアルイエットのウルザー家から契約金2000万B(ブレット)、年俸1000万B+俺好みの女で合意。
そして、出来高払いとしてムストとアルイエットの身体というインセンティブの契約だ。
アルイエットは身体を要求した時には激怒したが、ムストがアルイエットを説得。
俺の実力を見せてアルイエットが納得したらという『出来高払い』になったわけだ。
別に先払いでもヤリ逃げする気はないのだが、互いに納得する条件としてこういう契約になった。

追い詰められた時にエルト王国が俺をヴィスト王国に売り渡すなどの危険性がないとはいえないが
俺にヴィスト王国と戦う軍を、国の全軍の指揮権を与えてくれると言うのだ。
普通に傭兵として仕官し、軍を掌握できるようになるにはとてつもない時間を要するが、この話に乗れば
俺がアルイエットを仲介して全軍を掌握出来るのだ。
決して悪い話ではない、むしろ良すぎるくらいの条件だ。
俺はこの話を引き受けることにした。