オープニングフェイズ Part1

まぁ、考え方によってはヴィスト王国との戦いが先に延びただけ。
その間に戦力の把握と活用法・補強などをする時間が取れると、前向きに考えよう。
うん、前向きに…
クーデターを起こすということは先に内部の悪性腫瘍を除去できるということ。
今後のエルト王国再建を考えても悪いことではない、そう思うことにしよう。










……

………

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……………

………………

…………………ダメだ。
王国内の情報資料を読めば読むほど沈んでいく。
貴族関係がアルバーエル将軍亡き後、ラルフウッド国王、ロイア伯爵親子と次々に貴族関係を
仕切っていた人材が亡くなったことで野放しになってしまっているから荒れ放題なのだ。
ムストに聞いてみるとアルイエット寄りの女王も「お飾り」で何かを期待するなとのこと…
仕切る人材の居ない貴族たちの横槍もあり、完全にアルイエットが軍内で孤立している状況だ。
まずはその状況を打破し、アルイエットを軍の中心の認められるようにする。
俺はそこから始めなければならないようだ。

とりあえず、暗殺に頼った面が強いと判ったクーデターに関しては中止させた。
失敗の確率がいくらなんでも高すぎるからだ。
もう少し具体的で成功率が不確定要素に大きく左右されない内容なら支持も出来るのだが…
そもそもクーデターを起こそうとした背景には一部の貴族がヴィスト王国と密約を交わしたという
情報が得られたからだ。つまり『既にヴィスト王国に領土を売った』貴族が居ると言うことだ。
ただでさえ半減している領地で貴族がヴィストについたとなるとエルト王国がヴィスト王国に併合され
消滅するのは時間の問題と言える。
「エルト王国を守りたい」それがムストとアルイエットの共通する意見だ。
しかしながら王国側に軍事面に強い人間は居ない、そこで俺の登場というわけだ。

ム:クーデターを中止して何をするつもりじゃ?

少なくともクーデターよりは成功率の高い作戦を行うんだよ!
俺は八重を通じて手回しを、アルイエットには指示を出し、兵を城下町に集合させることにした。
けれど、やはり…

謀ったなシャア!

と叫びたくなったのも仕方あるまい。
お家騒動に巻き込まれるとわかっていればさっさと他国へと脱走していたさ。
しかしながら、謀られたことに気付かず了承したものだからスタート地点が予想より後方からになった。
今更悔やんでも仕方が無い、前向きだ前向き……。
ついつい後ろ向きになりたくなるのを強制的に前向きにするしか今の俺にはないのだから。
とりあえず貴族からエルト王国の実権を握ったらヴィストと対することはムストに確認をとった。

ア:それに奪われた領地は取り返したい

わかった。そこまでの考えを持っているのなら付き合ってやろう。
いや、実際は付き合わざるを得ないのだが、前向きに考えようとすると…こう思うしかないのだ。