オープニングフェイズ Part2

3日後、王城前にはエルト王国の兵士が3万人以上集結した。
俺がアルイエットに指示して集まらせたのだ。
アルイエットは兵士たちに向かって

 ・ ヴィスト王国に対し、形勢を逆転する策があり、実行に向け準備中である。
 ・ ヴィストと戦い続けるには当然ながら兵たちの協力が必要である。
 ・ しかし無傷でというわけにはいかない、恐らく半数は戦死してしまうであろう。
 ・ それでもヴィストと戦い続けるという者たちは残って欲しい。
 ・ 命が惜しいと思う者は身分・役職問わずして城下を去ってもかまわない。
 ・ 城下を去った者たちを責めたり、追ったりはしない。

といった内容を高らかに告げた。
…まぁ、最前列に居るアルイエット直属の兵士たちにカンペを持たせていたので
アルイエットはそれを読み上げるだけだったのだけれども。

その後、アルイエットは「緊張した」と言いつつ戻ってきた。

ア:それでも兵を纏めるのに必要ならばやらないとね

……

…………

………………あ〜、そういえばアルイエットにはそう言って丸め込んだんだった。
それをそのまま鵜呑みにしたとは、本当にバカ正直というか素直というか……
俺はアルイエットに「隠れつつ外を見てみろ」と言うとアルイエットは素直に外を見た。
しかし、その直後には彼女の表情は顎が外れたようなマヌケな表情に変わった。
それもその筈だ。兵士の大半が我先にと城門向けて駆け出していたのだから。
もちろんヴィスト王国と戦う為に勇み出て行ったわけではない、逃げて行ったのだ。
俺は勿論こうなる事が解っていてアルイエットに指示を出したのだが、「兵を纏める為」と
信じ込んでいたアルイエットには衝撃的な光景だったようだ。

結果的にヴィスト王国と戦う為に命を散らせても構わないと残った兵士の数は3000人チョイだった。
演説時に集まった兵士の約1割が残ったのだ、俺は良く残った方だと思った。
正直、1000人程度残るかどうかというのが予測だったから、俺にとっては嬉しい誤算だ。
だが、俺の説明を鵜呑みにしていたアルイエットにとっては違った。
部屋に怒鳴り込んでくるなり俺の首を締め上げてきたのだ。
「よく残った方じゃないか」
と素直に言うも全く納得するわけでもなく、説明するようにと脅迫してきた。
「首と胴が離れ離れになるわよ」と言うのは完全な脅迫である。

仕方が無いので、俺は八重に情報を報告させた。
ヴィスト王国と密約を交わしたキューベル公爵、レゾー伯爵、クルマド伯爵の3人の領土で反乱が起きようとしている事。
それも国に対しての反乱ではなく、民衆が貴族を倒そうという類の反乱であるという事。
詳細の講義は後々にして、敵勢力の足元が揺らいでる今が寝返った貴族たちから権力を奪い返す絶好のチャンスだから
これから攻め込むぞ、とアルイエットを叱咤した。

ア:そうだけど兵士が…

だから3000人以上残ってるだろうが!。
それに八重には傭兵ギルドへ話をつけさせにも行かせてあるから戦力の心配は無い。
そしてアルイエットには残った3000人少々の兵も給金を3倍にしてやるように告げた。
国への忠義で残ったやつらは生き残れば国を再建する際の幹部候補として登用できるからだ。

さて、それじゃ戦うとしますかね。