『そよ風の行方』


「長瀬刑事、エアメールが届いていますよ」

部下の佐藤君が私に声を掛けてきた。
……エアメール?差出人は?

「えっと、ニューヨークのヤナガワって方からです」

柳川君か……
ふと、私は懐かしむように上を見上げた。

「お知り合いですか?」

あぁ、昔の部下だよ、私の右腕として働いてくれた……ね。

と、私は手紙を受け取り、封を開く。

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前略 長瀬刑事

御無沙汰しております、柳川です。
配属中は大変の世話になりました。

あの事件より早10年が経とうとしておりますがお変わりありませんでしょうか。
こちらに来てからというもの、貴之は驚異的なペースで回復しており、
医療技術の素晴らしさに驚かされました。
そして、ついに一般人としての生活が行なえるほど回復したのです。
とても、感激しました。

そして私たちはつい先日、6月29日に結婚しました。
貴之のたっての願いで、6月の式となりました。
『June(ジューン)ブライドとJUNE(ジュネ)ブライドを掛けて』だとか…
こちらでは同性での結婚も合法とされているので、毎日が幸せです。

また、帰国した暁には御挨拶に伺いますので、長瀬刑事も御身体に気を付け、
勤務されます事を心よりお祈り申し上げます。

敬具

                                柳川裕也

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ふぅ、あの2人が結婚か…
まぁ、当人たちが幸せならいいか…

「へぇ、男同士で結婚されたんですか、この方」

あぁ、そうらしい。
単に隣に引っ越して『知り合い』になった事から『尻愛』に発展し
結婚まで至るとは……今の若者は凄いね。
どうも私のような年寄りには想像できない事だが、佐藤君には想像出来るかい?

「いやぁ、自分にもちょっと……
 ですが、僕の親友にメイドロボと結婚した人はいますけどね」(笑)

私の会心のダジャレ(自称)をさらりと無視して、佐藤君はそう答えた。
それにしてもメイドロボか……どうも身内にそういうのを作った人物がいる気がするが…
製作側としてはどういう心境なのだろうな。

「まぁ、本人同士が幸せなら、僕はそれもありだと思いますよ」

なるほど。確かにそれは一理あるな。
まぁ、遠い地で暮らす彼らの幸せを、私も祈るとするかね…
さて、仕事仕事…


Fin







え〜、管理人のヒロ(F-1)です。 HDDのバックアップデータを整頓していたら、かつて書いた『痕』のSSが出てきたので掲載。 実はこのSSは知り合いのサークル同人誌に掲載されたモノでもあります。 まぁ、完売して既に在庫が無いらしいし、掲載しても問題ないかなと…w しかし、新年早々にこんなの掲載するなよ、俺^^; ちなみに、これ書いた当時も新年最初の原稿だったわけですが…^^;                            2006.01.01