――はじめに―― この物語は「とらいあんぐるハート 〜Sweet Songs Forever〜」を基に、 結構いい加減に書いたものですが、そこら辺りは了承して頂けると幸いです。 では、つたない物語にどうぞ、お付き合い下さいませ。花見における、いわゆるコメディー 春がやって来た。 北の方は、まだ山に雪が残っているという、そんな気象情報であったが、 ここ海鳴では既に、あたたかな陽気が何日も続いていた。 さて、春と言えばお花見である。 高町家のお友達である神咲那美の肝いりで、この年高町家はさざなみ寮の オーナーの土地の桜を借りて楽しくお花見をしましょう、という事になった。 さざなみ寮の面々は、それより前に花見を済ませていたという事で、 今日は誰をはばかる事もない、というわけである。 「それでは、かんぱーい!」 「かんぱーい!」 高町家の〔かーさん〕こと、桃子さんの音頭で乾杯が発せられると、後はもう無礼講。 城島晶と鳳蓮飛(レン)お手製のお弁当も、みんな美味しそうにぱくついている。 「あ〜、やっぱりおふたりの作るお料理って、美味しいですねー」 那美がふわりと微笑むと、 「うんうん、この春巻も美味しい」 忍も手放しで賞賛している。 「晶様、レン様、後で作り方などご教授いただけますか?」 ノエルは、お勉強に余念がない様子らしい。 「あ、ノエルさんだったら簡単に出来ますよぉ」 「そですー、ほんまちょちょいー、とやれますさかいに」 晶とレンは、こう言いながらも内心互いに、 (よっしゃあ、今年も大成功!) と凱歌を上げていた。 「はい、あなた……今年もみんなでお花見が出来ましたよ」 桃子が、夫の士郎の遺影の前にお酒を一献傾けると、 「士郎、今年もお花見、楽しもうね」 クリステラ・ソングスクールのワールドツアーを終えて帰国したフィアッセ・クリステラも、 遺影にしみじみと微笑む。 美由希は、この頃すっかり慣れてきた久遠が可愛くて仕方なく、 「ほらー、甘酒だよー」 「くぅーん」 「おねえちゃん? くーちゃんに、あんまり飲ませないでね」 妹のなのはに釘を刺されたりしている。 恭也は、と言うと、そんな光景を優しく目を細めて見ていた。あまりお酒は飲めないので ――飲めないわけではないが、本人にその気がない――お茶を含みながら、ではあったが。 桜の花びらが、はらはらと舞っては風に流されていく。 陽光も柔らかく、絶好の日和だった。 しばらく、飲みながら食べながら、花を見、話が弾む。 そうして時間が程よく過ぎた、そんな頃合いだった。 「甘いのも、どうぞー」 晶が持って来た大福もちを出した時、 「だいふく」 ぽん、という効果音じみた音と共に、久遠が子供バージョンに変化した。 「お、ほやや……」 が、変化した途端によろよろとよろめいた。 「おねえちゃーん……」 なのはが、美由希を恨めしげに見る。 「あ……あははー、可愛いから、つい……」 美由希が、面目なさ気に笑いで誤魔化す。調子に乗って甘酒ばっかりやっていたのだが、 今回桃子とフィアッセが作った甘酒は、酒粕を使う分晶が作るものと比べてアルコールが 強めだったりする。 まぁ、何と言っても甘いとは言え〔お酒〕と名が付くしろもの、量も過ぎれば酔いもする、 という事なのだろうか。 よれよれ、とてとて、と危なっかしい足取りで久遠がよろめいた先は―― 「おっと……大丈夫か? 久遠」 倒れそうになったところを、恭也が受け止めていた。 「くぅー……」 甘酒でよくもまぁ、と思えるほど、子供久遠の顔は真っ赤になって、目もとろんと潤んでいる。 「少し、横になるか?」 恭也が、持ち前の父性で久遠に休む事を勧める。 皆、久遠が子供バージョンになっても今では驚かない。初めてそれが分かった時には、 いや、それを見せ付けられた時にはそれこそ、蜂の巣を突いた様な騒ぎになったものだったが、 慣れとはある意味恐ろしいものである。 が、実は恭也と那美、なのは以外の高町家+月村家の面々は、 (その次の段階がある) という事を、未だ知らないでいた。 そして、知らないという事は、往々にして驚愕を呼ぶのが常である。 とまれ、とにかく今は久遠のこの後だ。 勧められた久遠は、恭也の顔をじっと見るなり、 「きょうや……好き」 と、のたまった。 周りの皆がくすりと微笑む。子供のこういう言葉は純粋な好意で邪気がないから、尚更なのだ。 ところが、この言葉には、とんでもない続きがあった。 「くおん、きょうやといっしょー」 と言うが早いか、いきなり空中に飛び上がってくるりと一回転。 そして、またしてもぽん、という効果音じみた音が響き―― 「えーーーーーーっ!?」 「う……うっそ……」 「……初めて見ました」 「ま、マジかぁ……?」 「く、くーが大人に……」 「あらやだ……」 「あ、あーあ……久遠ったら」 「く、くーちゃーん……」 大人バージョンになった久遠が、そのまま恭也にかじり付いたのだった。 「お、おい久遠?」 大人久遠に抱きつかれた恭也が流石に動揺するが、久遠はそんな事なぞどこ吹く風。 「恭也ー、好き」 声までも、艶っぽいハスキーボイスに変化してしまっている。 「く、くうっ……ま、負けてる……」 「う、うちら、くーにまで……」 晶とレンは、完全敗北モードと化していた。 無理もないだろう。まさか久遠の変化が二段階あって、しかもその二段階目がとんでもなく ナイスバディーな美女だとは、思いもしてなかったであろうから。 「やれやれ……」 「すいませーん……まさか久遠が……」 「それを言ったら那美さん、わたしが甘酒飲ませ過ぎたのが、そもそもいけなかったんですし」 恭也に抱きついた久遠は、酔いが回ってそのままぐったりと突っ伏してしまい、 結局はそのまま宴が続く事になったのである。流石に、那美も美由希もお手上げであった。 その間恭也は、 「こうして見ると、恭也と久遠というのもお似合いよねー」 「桃子ぉ、恭也ってわたしには膝枕してくれないのにー」 桃子やフィアッセにからかわれ、 「ノエルー、デジカメ持って来た?」 「はい、忍お嬢様」 「よーっし、これは撮っておかないと」 忍にはネタにされ、 「……ららら……らいらら……るるるる……」 「あー、あかーん……レベルがぁ……レベルがぁ……」 晶とレンは相変わらずの敗北モード、 「おにーちゃん、ごしゅうしょうさま……」 なのはには憐れまれ、 「くー……むにゃ……」 久遠は寝入ってしまって、膝から離れる素振りのひとつすら見せないという、どうしようもない状況。 それでも、ちゃんと久遠に膝枕してやっている恭也の口からはただひと言、 「……勘弁してくれ」 だったそうな。 こうして、この年の高町家のお花見の時は、驚きの出来事と共に過ぎていったという。 忍がデジカメで撮ったと思われる、恭也と久遠の映った写真がどうなったか。 それは後に厳重な緘口令が敷かれた為、不明である。 花見における、いわゆるコメディー 了
いかがでしたでしょうか?
この作品はかつて「とらハの主題による喜遊曲?」という、今となっては何だか意味不明のタイトルを改題した短編です。
一応若干の手直しはしてありますが、殆んど原文のままですね。
この作品を書く事になったそもそもの話は、当時ホームページを共同運営していた二人の友人からのリクエストでした。
一人は那美萌え、もう一人は久遠萌え、という事で、筆者としてはっきり言ってしまうと、それぞれに対応してたら
一体いつ応えられるものか、まるで見当もつかない(自分で言うか)、というところで、どうしたものかと散々迷っていた
記憶があります。
実際、筆者は書けると判断出来るまでは全くと言っていいほど書かないし、書き始めてからも少しずつしか
書き上げていかない、というわけで、
(多分おふたりにはとっくに忘れ去られているかなー、そうだったらいいけどなー)
などと、トンでもないバチ当たりな事を考えていたのを白状しておきます(自爆)。
ともあれ、那美も久遠も出して、高町家の〔家族〕も出そう、という事で考えた結果が、今回の作品となったのですが……
まぁ、筆者の書き方は相も変わらず進歩しとりませんね(苦笑)。
それでも最低限「楽しめる作品」として書いたつもりですので、単純に読む事を楽しんで頂ければ幸いです。
それでは、この辺りで筆を擱きたいと思います。
ではでは。