「おばちゃーん、花火ちょうだーい」
「おい、花火をよこせ。隠したりするとためにならんぞ」
「ん?」
「…………」

こうして、壮絶なる戦いの火蓋は切って落とされたのだった。


  花火争奪戦 TYPE−R!


「だあ〜〜!! 全部持ち逃げしやがって!!」
「なによ? あたしの方が早かったでしょ!?」

大量の花火を抱えて逃げる少女と追う男。
傍目に見ると……いや、普通に見ても十分異様な光景である。

「大人しくそれをよこせ!」
「嫌よ!」
「そうか。なら……」

男はどこからか取り出した白くて丸い物体を手にして振りかぶる。

「必殺! 毛玉アタッーーーーク!!!!!!!!」
「ピコ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「!?」

咄嗟に飛んできた毛玉を避ける少女。
毛玉はそのまま地面にぶつかり数回跳ねて止まった。

「……なにこれ?」

少女は思わず足を止め毛玉に近付く。

「今だ! やれッ!!」
((ムクッ!!))
「なにッ!?」
「 ピコッ、ピコッ、ピコッ、ピコッ、ピコッ、ピコッ、ピコッ、ピコッ…………………」

踊り出す毛玉らしき物体。

「………鬱陶しいわッ!!!!」(怒)

走り寄って来た男がついた勢いを殺すことなく足を振り上げ、毛玉らしき物体を蹴飛ばす。

「 ピコ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 」
((キラン☆))

そのまま毛玉らしき物体は空の雲と見分けがつかなくなるまで飛んで行った。

「はぁ、はぁ……どうだ、渡す気になったか?」
「なんでそうなるのよッ!? っていうか、アレって結局なんだったの!?」
「…………………犬?」
「…なんで疑問系なのよ」
「…………………」
「…………………」
「そんなことはどうでもいい。
 よし、それならもっと恐ろしい目に遭わせてやる!」


そう言うとポケットからボロい人形を取り出す。
そしてそのまま人形を地面に置き、傍に座り込んでなにかを始める。

「……………………!!!!」
「!!??」

地面に置かれた人形が立ち上がる。
そして歩き出して…………。

「………で?」
「…………これだけだ」
「これのどこが恐ろしいのよッ!!!!」(怒)
((バコッ!))

少女が人形を蹴飛ばす。
人形は大きく弧を描いて地面に落ちる。

「なにしやがるッ!! ……って、逃げるなッ!!!!」

男に背を向けて走り出す少女。
男は人形を回収して後を追う。

「クソッ! どっちだ?」

少女を見失った男の前に現れたのは分かれ道。
右か左か?
ここを間違えれば二度と少女には追いつけない。

「……せっかくだからこの赤の扉を選ぶぜ!!」

そう言って左の道を選ぶ。
ちなみに、どちらともただの道なので、どこにも扉は無いし赤くもない。

「こら〜! なんでそっちに行くのよ!!」
「ん?」

後ろを振り返る男。
どうやら反対の道で少女が待ち構えていたらしい。
不意打ちを仕掛けるつもりだったのだろうが、男が逆に進んだために失敗したらしい。

「……ふっ、お前の動きは全てゼロが教えてくれている…」
「なに言ってんのよ、ゼロって何?
 まあいいわ、これでどう!?」


そう言って何かを地面にばら撒いた。

「!」

((シュ〜〜〜〜〜〜〜))

地面を火を吹き上げ、回転しながら動き回る物体。

「ネズミ花火とは味な真似を。
 だがっ!」


男は迫り来るネズミ花火の上を飛び越える。

「回避運動、完了」

着地と同時に不敵な笑みを浮かべ、(本人的には)クールに決める男。
が。

「行っけ〜〜〜〜!」

叫び声とともに手の中にある物を男に向ける。
それは……

「ロケット花火!?」
「えいっ!」

少女は躊躇いもなく火を点け、手を離す。

((ヒュ〜〜〜〜〜〜ン))

「うおっ!?」

避ける男。

「こらガキッ! 危ないだろうがっ!」
「危ないからやってるのよっ!!」

そう言って次々とあるだけ全てのロケット花火に点火する少女。
次の瞬間、数十発に上るロケット花火が男を襲う。

「ぬおおおおおおおおおっ!!
 ぬおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!
 ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


次々と襲い掛かってくるロケット花火を回避する男。
しかし、だんだんと動きが鈍くなり回避運動が遅れ始める。

「遅い! 遅いぞエピオン!! 奴の反応速度を超えろ!!」
「……ゼロじゃなかったの?」

なんだかんだ言いつつ、結局男は飛んできたロケット花火を根性で全て避けきったのだった。

「はぁ、はぁ、はぁ………」
「じゃあ、次はこれね」
「げっ!」

少女が手にしていた物。
それは打ち上げ花火(連発式)だった。
当然の如く筒先は男に向いている。

「冗談だろ!?」
「本気よ。えいっ!」

((パシュッ……ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン………
 …パシュッ……ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン………
 ……パシュッ……ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン………))


3つ連続で打ち出される光弾。

「ぬおおおおおおおおおっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
某マト○ックスの如く上半身を倒して避ける男。
光弾は男の上を通り……

((パァ〜〜〜〜ン!!!!))

過ぎなかった。

「熱ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!!!」

見事、光弾は男の真上で炸裂したのだった。
しかも物凄い近距離であったためにモロに爆発を食らう。

「む…無念………」

爆発の衝撃が堪えたのか、男は道へと倒れ込み気を失った。

「…あう〜、折角一杯買ったのに1個だけしか残ってない…。
 でも、1個あれば良いか♪」


こうして、花火争奪戦は少女の勝利で幕を下ろした。









そして、その後どうなったかと言うと………。
「…で? 花火は?」
「ふっ! そんな昔の事は忘れた」
「そうか……」
((カチャ…))
「!! 聖、それだけは止めろ、な?」
「花火が無い? しかも渡した金はどうした?」
「……………」
「……………」
「…………てへっ」(微笑)
「……そうか、わかった。国崎往人、貴様の真っ赤な血の花を咲かせる事で許してやろう」
「止めろ、目が笑ってないぞ?」(汗)
「本気だからな」

……

…………

………………

……………………


「ぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!」

静かな街に断末魔の絶叫が木霊したのだった。









さて、もう一方は……。

「で? もう一度言ってみろ」
「あう〜。だから、祐一をいじめようと思って………」
「…花火に火をつけて俺の部屋に投げ込もうとした、と」
「うん♪」
((ガツン!!!!!))
「あう〜〜〜〜」(泣)
「いたずらは百歩譲って許そう。
 だけどな……」


ポンポンと花火を叩く少年。

「こんな1メートルもあるようなデカイのを使うな!!
 この家ごと吹っ飛ぶだろうがッ!!!!」(怒)

「あう〜〜〜〜」(泣)

閑静な夜の住宅地に少年の怒声が響き渡った。




知ってる人は知っている(笑)うちのサークル初のコピー本『花火争奪戦』の修正Verです。
ようは、濃い展開になったってだけ。(スパロボの影響を受けたのは言うまでも無い。 爆)

『TYPE−R』の解釈はお好きなように。
リメイクでも、リローデットでも、リファインでも。
どっかのシューティングゲームでも別にいいです。(笑)
まあ、とあるゲームで『TYPE−R』の鍵を作った直後だったんで付けただけ。