真一郎「…………ま、負けた…………」
唯 子「にゃはは。しんいちろの負け〜〜〜〜〜」
いづみ「相川、破れたり!」
小 鳥「ゴメンね、真くん」
『後悔先にたたず』、『後の祭り』。
よく聞くけど、まさかその意味を身をもって知ることになるなんて……。
これは俺の苦悩と困惑に満ちたとある一日の物語である。
相川真一郎氏の屈辱
〜あるいは鷹城唯子嬢の嘲笑〜
真一郎「弱い、弱い。このまま10連勝は貰うぞ」
いづみ「強気だな」
真一郎「当たり前だろ? 悔しかったら止めてみな!」
その日、俺は唯子、小鳥、御剣と鷹城家でゲームをしていたのだ。
このときの俺は絶好調で勝負は負け無しの9連勝中、10連勝の大台まであと1つに迫っていた。
小 鳥「今度は勝つもん!」
真一郎「無駄無駄。
そうだな……次、もし負けたら、なんでも言うこと聞くよ」
いづみ「いいのか、そんなこと言ってて?」
真一郎「当然!!」
唯 子「なら勝負!!」
全く負ける気がしなかったから、こんな風に言いたい放題していた。
そう、言っていたんだが……。
真一郎「…………ま、負けた…………」
と、冒頭の通り見事に負けた。それも最下位というオマケ付き。
情けなや〜。(泣)
唯 子「な〜にやってもらおっかな〜?」
いづみ「そうだな………」
真一郎「……あまり無茶なことは止めろよ」
無駄とはわかっていても一応釘を刺してみる。
こいつらは遠慮しない、絶対に。物凄い事を考えだすに違いない。
小 鳥「う〜ん……お買い物頼もうかな?」
真一郎「ん、わかったよ」
………………………
真一郎「……あの〜、買い物じゃなかったの?」
唯 子「そうだよ」
いづみ「相川、普通にただ買い物してくるだけで済むと思ってたのか?」
小 鳥「でも真くん、似合ってるよ」
いつの間にか俺は娘さん達によって『女装』させられていた。
今着ているのはクローゼットから出された唯子の私服だ。唯子のほうが身長があるから少し袖だとか裾が余る。
これで目を潤ませながら上目遣いでもすれば、大抵の男ならイチコロにできる自信があるぞ。
……自分で言ってて悲しくなってきたけど。
しかし、まさか本気でこのまま買い物に行かされるのだろうか?
いづみ「これだけだと物足りなくないか?」
小 鳥「えー? そうかなぁ……」
唯 子「………あっ、『いいこと』思いついた♪」
そう言って唯子が部屋を出て行く。
今のうちに逃げるか?
いづみ「相川、逃げようとか思ってないよな?」
……無理だ、忍者相手には逃げられないって。
しばらくして唯子が部屋へ戻ってくる。
いづみ「何してたんだ?」
唯 子「ふっふっふ。助っ人を呼んだから、ちょ〜っと待っててね」
小 鳥「助っ人?」
唯 子「すぐ来てくれるから♪」
唯子が俺の目を見て優しく微笑む。
が、その瞬間体中を悪寒が走った。うう、思わず鳥肌が。
いつの間にか唯子と御剣の2人がドアと窓の近くに寄ってる。
完全に包囲されてるよ。やっぱり強引にでも逃げ出しとけば良かったかもしれない。
無言の牽制に晒されること数十分、チャイムが鳴る音が聞こえた。
唯 子「あ、来たみたい」
再度部屋を出る唯子。
逃げようかな、と思いつつ腰を上げる。
そっと御剣を見ると微笑みを浮かべながらその手には苦無が。
『逃ガサナイ』と身体全体で言ってるし。
ダメだ、たとえ地獄まで逃げても追いかけてくるよこいつは。
観念して腰を下ろしたところに部屋へ唯子がよく見知った女の子と共に現れた。
真一郎「ななかちゃん?」
ななか「ど〜も、井上参上しました」
小 鳥「唯子?」
唯 子「ななかちゃん、やっちゃって!」
ななか「了解です♪」
真一郎「どわっ! 何を………あ、そこは……ダメ…………あっ♪」
いづみ「気色悪い声出すなっ!!」
………………………
いづみ「…………」
小 鳥「…………」
ななか「に、似合い過ぎですね」
唯 子「にゃははははははは〜〜〜〜〜!!!!」
真一郎「……」(怒)
俺はななかちゃんの手によって完璧に女の子にされていた。
カツラからアクセサリー、化粧に至るまで完全武装、どっからどう見ても問答無用で女の子。
……もうお婿に行けない。(泣)
いづみ「井上、お前って凄いな」
ななか「バイト先で勉強しましたから。結構自信あるんですよ」
小 鳥「凄いねぇ〜〜」
ななか「でも、相川先輩がここまで女装すると千堂さんと瓜二つですね」
いづみ「確かにな」
そう言って御剣がカツラの毛を後頭部で纏めるように軽く持ち上げる。
唯 子「ありゃ、瞳さんだ」
真一郎「……小鳥、鏡」
小 鳥「はい」
自分の姿を見る。
……マジに千堂さんだった。
唯 子「でも瞳さんよりちょっと背は小さいよね?」
真一郎「『鷹城さん、失礼でしょ!?』」
唯 子「は、はい! ごめんなさい!」
いづみ「……ぷっ」(笑)
ななか「そ、そっくりです」(笑)
唯 子「……あ゛」(汗)
真一郎「なにやってんの、唯子?」(笑)
唯 子「ななかちゃん、このカツラはやめよ?」
ななか「そ、そうですね……クスクス」
………で、カツラを変えて………
唯 子「じゃあ、しんいちろ? 行ってみようか〜!」
真一郎「……さっさと終わらせたいよ」(泣)
唯 子「じゃあはい、これ」
真一郎「……何、これ?」
唯子から渡されたのは3枚の封筒。どれも全部にしっかりと封がされている。
唯 子「この中に唯子達からの頼み事が書いてあるから、1つずつやってってね♪」
真一郎「別に今全部見てもいいだろ?」
唯 子「唯子とおそろいの制服着て一緒に学校通いたい?」
真一郎「…ごめんなさい」
唯 子「じゃあ、スタートするよ」
……さっさと終わらせよう。男として大事な何かが壊れてしまう前に。
小 鳥「頑張ってね、真くん」
ななか「気をつけて行ってきて下さいね」
いづみ「相川、骨は拾ってやるから安心しろ」
真一郎「心配するくらいなら止めろよ!!」
3 人「…………頑張れ〜♪」
わかってた、わかってたさ。みんなで楽しんでるって……。(泣)
☆えんかうんと1 七瀬
で、俺は今、風芽丘学園校門前に居る。
最初の御剣からの用事が『学校に置き忘れたノートを取ってきてくれ』だったからだ。
面倒ではあるけど今日は休日だし、知ってる奴と会わずに済むしこれは意外とラッキーだったかも……。
声 「あれ? 真一郎、どうしたの?」
真一郎「!!??」
いきなり声を掛けられた。
反射的に辺りを見回す。……が、誰もいない。
声 「ドコ見てるの、こっち、こっち」
声のする方、前方の今の視線よりちょい上を見る。すると……
七 瀬「ね、どうしたの?」
宙に浮かんだ七瀬だった。しかもいきなりばれてる。
真一郎「……なんでわかるの?」
七 瀬「なんでって、真一郎以外に見えないもん」
そ、そうなのか!?
七 瀬「で、なんでそんな格好なの?」
………………………
七 瀬「……苦労してるわね」(苦笑)
真一郎「わかってくれるか、七瀬?」
七 瀬「これからもそのままで学校に来ない?」
真一郎「七瀬〜」(泣)
七 瀬「ゴメンゴメン。話を戻すね。
学園の中だけど今日、結構先生が来てるよ」
真一郎「なんで!?」
七 瀬「抜き打ちで実力テストするみたい。要チェックね」
いい情報を入手した。帰ったら勉強しとこ。
七 瀬「ところでいいの? 用事済まさなくて?」
真一郎「そ、そうだ。どうするかな……」
七 瀬「なんならあたしが手伝おうか?」
真一郎「いいの?」
七 瀬「友達だもんね」
こうして七瀬の協力を得た俺は、誰にも見つかることなく御剣のノートを入手する事が出来たのだった。
真一郎「うしっ! 第1関門突破!!」
七 瀬「その格好でガッツポーズ決めても可愛いだけだよ♪」
真一郎「うぅ……」(泣)
あと2つだ。……2つもあるんだよなぁ……。(嘆息)
☆えんかうんと2 さくら
真一郎「また厄介な物を……」(汗)
2つ目の封筒を開けた俺。
中には『おっきな中華鍋 小鳥』と書いてあった。
ちゃんと代金も同封しておくとは感心。
だけど。
疑問1 俺が持って帰るのか?
疑問2 買ったとして…………振れるのか、小鳥?(笑)
まあ、約束は約束だからな。買いに行かなきゃ。
………………………
で、やってきたのは海鳴商店街。目的は中にある金物屋。
だけど、人通りの多いところはやっぱり抵抗があるんだよなぁ……。
真一郎「仕方ない、急いで終わらせよ。えっと、確か金物屋は……」
声 「そこの君」
真一郎「はい?」
振り返ると男が立っていた。割と男前と呼ばれるタイプ。けど、かなり軽薄そうな印象。
ん? こいつは確か3年の……
真一郎「……えっと、氷村…」
男 「へぇ、知っているとは感心だね。氷村遊だ」
学園で最近噂の色男。
……いい噂じゃないけどね。
遊 「君、僕に付き合いたまえ」
真一郎「…は?」
遊 「君とデートしてあげようと言っているんだ。
容姿はそこそこだしね」
真一郎「……」(怒)
ちょっとムカツク。
こんな物言いする奴になんでわざわざ付き合わなきゃいけないんだ!?
真一郎「『結構』です」
遊 「『決行』なんだね。じゃあ…」
うわっ、押し売りの常套手段だよ。古いけど。
けど、このままでは相川真一郎、貞操のピンチ!?
声 「相変わらず馬鹿やってるのね」
遊 「誰だっ!! …げっ!」
真一郎「あっ…」
ちょっと小柄な女の子。さくらだった。
普段はそうでもないのだが、今はちょっと釣り目がちになってる。
さくら「遊、いい加減にしないと大変なことになるわよ?」
遊 「ほう……随分と大きな口をきくじゃないか。
一度、徹底的にその体にこの僕の恐ろしさを刻み込んでやろうか?」
瞬間、氷村の目が凶暴性を持ったものに変わる。が…
さくら「知ってる? おじい様の警告」
遊 「…なに?」
さくら「『馬鹿な真似ばかりする一族の恥は……』」
遊 「……なんだ?」
さくら「『狩る』…だそうよ」
遊 「……………ふん」
踵を返して去って行く氷村。
妙に足早なところを見ると激怒しているのか?
あっ、コケた。
訂正、精神的ダメージを受けて冷静さが無くなっていたようだ。(笑)
さくら「大丈夫でしたか?」
あっ、目つきが優しくなってる。いつものさくらだ。
やっぱりこの娘は笑顔が一番。
さくら「ところでなんでそんな格好をされてるんですか、先輩?」
真一郎「ああ、実は唯子のやつがね………。
……なんでわかるの?」
さくら「どんな格好をしてても先輩の匂いは変わりませんから」(微笑)
今更だけど、本当に俺の周りって凄い娘ばっかり。(汗)
………………………
真一郎「………と言う訳」
さくら「鷹城先輩らしいと言うか……」(苦笑)
金物屋に向かいながら、さくらに説明した。
すぐに事情を把握してくれて助かったよ。
結局、金物屋で買った鍋は後で配達してもらうことにした。
ここぞとばかりに特大の鍋にしたのは小鳥には内緒だ。(笑)
さて、残りは1つか。
さくら「このまま何事も無く終わればいいですね」(微笑)
確かに。だけど……。
真一郎「無事に終わると思う?」
さくら「思えないですね」(微笑)
そうだろうなぁ……。はぁ〜……。(嘆息)
☆えんかうんと3 瞳
さあ、最後だ!
最後の封筒を開けよう。
((ピュ〜〜〜〜〜〜〜〜))
真一郎「げっ!?」
風に封筒が飛ばされた。
ヤバイ!!
無くそうものなら恐らく……。
唯 子「え〜、唯子との約束守れなかったの〜?」
と延々とすねられた挙句、
唯 子「しかたないから、唯子とおそろいの制服で登校だね♪」
と嬉々として言ってくるはず。で、当然拒否権は無視されるのだ。
で、結局唯子の押しに負けて学園へと……。
真一郎「なんとしてもそれだけは阻止するんだ!
男として。いや、『漢』として!!」
その『漢』が何故今、女装させられているかは気にしたらダメだ。
気にしたら……心の何かが負けてしまうから。(泣)
俺は全力で封筒を追いかけるのだった。
………………………
真一郎「あれには唯子が取り憑いてるんじゃないのか!?」
何度となく封筒を手にできそうなチャンスがあったにも関わらず、未だに捕まえる事が出来ない。
何故なら……。
真一郎「えいっ!」
((ピュ〜〜〜〜〜〜〜〜))
真一郎「えいっ!!」
((ピュ〜〜〜〜〜〜〜〜))
真一郎「えいっ!!!!」
((ピュ〜〜〜〜〜〜〜〜♪))
ことごとく俺の手から逃れる封筒。
絶対唯子のせいだ! 後でうにゅーの刑決定!(←逆恨み)
真一郎「えいっ!」
((ボスッ……))
何かにぶつかった。感触からすると人のようだが?
声 「大丈夫か?」
真一郎「はい、大丈夫で…すッ!?」
ぶつかった相手。物凄くタイミングの悪い事に悪友の端島大輔だった。
大 輔「ん? この封筒を追ってたのか?」
真一郎「は、はい!」
大 輔「ほらよ」
大輔が封筒を差し出す。
俺がそれを受け取ろうと手を伸ばした瞬間…。
((スッ……))
真一郎「……」
大 輔「……」
手を引っ込められてしまった。
真一郎「……」
大 輔「……」
じっと大輔が見つめてくる。
一体何がしたいんだ? ひょっとしてバレた!?
大 輔「礼は?」
真一郎「あ、ありがとうございます」
大 輔「よし」
今度こそ封筒を返してもらった。
ふぅ、取り敢えず一安心。
大 輔「……なぁ、どっかで会ったことないか?」
真一郎「えっ!? 無いですよ、初対面です!」(焦)
大 輔「そうか?」
大ピンチ! 気付くな、気付くなよ!
声 「どうかしましたか?」
真一郎「……あっ!」
大 輔「千堂先輩」
窮地に現れた救いの女神。風芽丘護身道部主将で先輩の千堂さんだった。
あまりのタイミングの良さに千堂さんを見る目から涙が出そうになる。
瞳 「……?」
千堂さんが目を細めながら俺を見つめる。
そういや、少し目が悪いって言ってたっけ。
大 輔「あの、彼女、千堂先輩の妹かなんかですか?」
真一郎「へっ?」
大 輔「いや、なんかそっくりだから」
真一郎「え、え〜と」(汗)
瞳 「ああ、従姉妹なんですよ」(微笑)
真一郎「!?」
瞳 「だから、ナンパなんてしちゃダメですよ。
井上さんに言いつけますよ?」
大 輔「いや、それは別にいいんですけど。
じゃあ、気をつけてな」
そう言って大輔は行ってしまった。
真一郎「あ、あの……」
瞳 「……ねぇ、ちょっとその辺りでお茶でもどう?」
………俺、千堂さんにナンパされてる?
真一郎「あの、その……」
瞳 「ちゃんと事情を聞かせなさいね。………ね、『妹』?」(微笑)
………やっぱりバレてるらしい。(泣)
………………………
瞳 「……自業自得よ」(嘆息)
真一郎「返す言葉もございません」
千堂さんに事情を話した。
で、全く躊躇いのない一刀両断するお返事。
確かに俺が悪いんだけどさぁ……。(号泣)
瞳 「……もう、仕方無いわね。この『姉』が一肌脱いであげるわ」
真一郎「えっ!? い、いいんですか?」
瞳 「ええ。…それにしても鷹城さん、ろくなことを考えないわね。
で、頼み事っていうのを見せてくれる?」
真一郎「あ、これです」
千堂さんに俺が渡されたメモの入った封筒を全部渡す。
瞳 「どれどれ……。
御剣さんはノート…か。妙にうっかり屋なところがあるから。
野々村さんは…中華鍋。いかにもって感じがするわ。
鷹城さんのは?」
真一郎「見る前に風で飛ばされたんでまだ見てないです」
瞳 「見てもいい?」
真一郎「いいですよ」
瞳 「…………………………」
唯子のメモを見る千堂さん。
………ん、気のせいか千堂さんから闘気、いや、殺気のようなものが……。
瞳 「ねえ、相川くん?」
真一郎「は、はい!?」
瞳 「これ、代わりに済ませてあげるわ。
…そのかわり、ちょっとお願いがあるんだけど」
真一郎「な、なんでしょう?」
瞳 「服、脱いでくれる?」
☆らすとえんかうんと
小 鳥「遅いね、真くん」
いづみ「ナンパされて着いて行ってるんじゃないか?」
ななか「確かにナンパされそうな可愛さではありました」
唯 子「ま〜だかにゃ〜♪」
小 鳥「あ、帰ってきたよ」
手に紙袋を持った真一郎。
その真一郎に唯子が歩み寄る。
唯 子「遅いぞ、しんいちろ」
小 鳥「心配したんだよ、真く……」
いづみ「…野々村も気付いたか?」
小 鳥「うん……」
いづみ「井上、お前も来い」
ななか「はい?」
そっと、3人は唯子から離れて行く。
唯 子「だいたい真一郎は、いっつも時間にルーズなんだから。
唯子たちがどれくらい待ってたと思う?
それにね………」
離れる3人に気付かず、真一郎に対してお説教モードに入る唯子。
が、真一郎はそれに構うことなく無言で紙袋を唯子に差し出す。
唯 子「あ、ちゃんと買ってきてくれたんだ。
しんいちろ、えらい、えらい♪」
唯子が真一郎の頭を撫でようと手を伸ばす。
しかし、その手が途中で止まる。
唯 子「…あれ? しんいちろ、背伸びた?」
真一郎「そんなことないわよ」
唯 子「……声変わりした?」(汗)
真一郎?「しないわよ」
唯 子「………真一郎だよね」(滝汗)
真一郎?「ええ、そうよ。鷹城さん?」(微笑)
唯 子「ひ、瞳さんッ!?」
唯子の目の前に立っていた人物。
それは、真一郎から服を借りて入れ替わっていた千堂瞳だった。
唯 子「なんで瞳さんが!?」
瞳 「相川くんに偶然会ったのよ。で、色々と聞いたの。
全く、あなたって人は!」(怒)
唯 子「!!」(焦)
急激に反転して猛烈ダッシュで逃げに入る唯子。
それに遅れることなく追いかける瞳。
瞳 「鷹城さん! あなたは少し恥というものを知りなさい!!
なんて物をメモに書いてるんですか!!」(怒)
唯 子「え〜ん」(泣)
追い駆けっこする2人を見つめる小鳥、いづみ、ななか。
ななか「まさか千堂さんと入れ替わってたなんて……」
いづみ「いや、アレは雰囲気で気付くだろ」
小 鳥「ところで何であんなに千堂さん怒ってるの?」
声 「とんでもない物書いてたからだよ」
いづみ「お帰り、相川」
3人の後ろに真一郎が立っていた。
服装は男物に戻っている。
瞳に服を取られたために急遽購入して着替えたらしい。
小 鳥「唯子のにはなんて書いてあったの?」
真一郎「……それが……」
瞳 「いくら幼なじみで遠慮がないからって、
『自分の下着』を男の子に買いに行かせるとは
何事ですかっ!!」(激怒)
いづみ「……それは流石にマズいだろ」
ななか「お2人ってそういう仲じゃないんですよね?」
小 鳥「え〜と……」(苦笑)
真一郎「馬鹿」
唯 子「『唯子の』だったから? 『小鳥の』だったらよかったの?」
瞳 「そういう問題じゃないでしょう!!」
結局、怒り爆発状態の瞳の気力に唯子が勝てるわけもなく、捕まって女王乱舞(笑)をフルコースで味わうこととなった。
唯 子「うぅ。なら、『瞳さんの』は?」
瞳 「!!」
いづみ「あ、また墓穴掘った」(呆)
ななか「今ので千堂さんの怒りゲージが再爆発しました!」
真一郎「お、浮かしてエアリアルコンボに繋ぐか!?」
いづみ「いや、途中でキャンセルから必殺だろ」
ななか「ゲームじゃないですってば」
小 鳥「あはは…………」(汗)
唯 子「じゃあ、誰のだったらいいの〜〜〜〜〜〜〜〜????」
教訓
墓穴を掘るのも程々に(笑)
長いよな、タイトル。
完売したオフセ本より再編集したバージョンです。
じっくりととらハDVD-Eのおまけシナリオをリプレイした後なので真一郎の口調が変わっています。
具体的な違いはオフセ本と比較のこと。(笑)
元々書いたときのコンセプトは、
・とにかくドタバタで真一郎女装ネタ
・時期はとらハ1のゲームシナリオ内
・登場キャラは基本的にヒロインは網羅の方向で
でした。
女装ネタですが、これ、とらハDVD-E発売前に書いてたのでおまけシナリオでアレをされたのはかなりビビりましたよ。
危うくお蔵入りする羽目になるところでした。(笑)
あと、時期を明確に決めなかったために呼称で一番悩んだのもこれ。
千堂さんor瞳ちゃん、さくらor綺堂さんとか。
最終的にはラブちゃ箱を参考にしました。
登場キャラでは展開上、予想外に氷村&大輔が出てきてビックリ。(笑)
逆に弓華がいないのは出会う前だから。というのが建前。
本音は喋らすときどこをひらがなで、どこをカタカナで書いて良いか分からんのだよ。(悩)
故に弓華が出てきたのは『モノ』が最初で最後の可能性が。(爆)
今回、とらハ1のキャラで1本新作書いてみようかという刺激になりました。
以下、言霊的物語構成についてですので興味のある方だけどうぞ。
言霊は割と「起承転結」を重視してます。
一応「起承転結」には相応しい分量の比があるらしいですが、意識して作ってません。量は感性で加減。
展開のさせ方は落語と吉本新喜劇などがベースですね。短編、中編の話を作るなら優れたお手本だと思います。
ただ、言霊は吉本新喜劇の影響で話の最後を笑いで締めたがる傾向にあります。大人しく終わらせられんのか、俺。(苦笑)
長編になると全体の「起承転結」の中に「起承転結」を内包させます。
『モノ』がその構成ですね。
長々と波の無い1本筋を書き続けるとダレるんです。なので対決ごとに独立させて完結形式に。
結果的にパーツで話を完結させたため、多少の調整で順番を入れ替えても話の筋が通るという優れものになりました。
で、今回のこれは「起」を決めて書き始めました。この時「結」は不確定状態。
(↑最低限「起」と「結」を決めてから書き出す言霊にはとても珍しい行為です。)
最初は七瀬、さくら、瞳の登場順も決まってませんでした。なので作成順は実はさくらが一番だったりします。
結論から言えば「起」「転」「結」「承」で書いてます。
最終的に全体を通して直しをしてるので流れはおかしくないと思うんですがどうだったでしょう?