ロ ン ド | |
Fire Emblem -聖戦の系譜- | 光と闇の回旋曲 |
「遂にイシュタルも倒れたか…」 ユ リ ウ ス バーハラの豪奢な玉座に肘を掛けもたれかかったロプトウスは、目の前のセリスに目もくれず、つまらなそうに独りごちた。 ――――― イシュタル…、イシュタル……… ―――― ユリウスは唯一人の理解者であるイシュタルを失ったことにより、完全にロプトウスに身体を奪われてしまった。 なか 黒 い 書 物 バースデイ 精神で泣いているのは小さな子供。ロプトウスを受け取った7歳の誕生日。幼すぎる少年。 「ユリウス!」 バタン、玉座の間の扉が開き、セリス率いる解放軍の面々が手に手に神将器を携え雪崩れ込んできた。 「ここまでだ。この城は全て制圧した。残るはお前だけだ!」 ロプトウス ティルフィングを抜き、その切っ先をユリウスに向けて言い放つ。 「お前を倒し、この世界に平和を取り戻す!!」 ロプトウス すると、今まで興味も無さそうに横目でセリスを見やっていたユリウスが、さも愉快そうに口の淵を歪め、口を開いた。 「この私を『倒す』だと? くくく…、バルドの末裔ごときがこのロプトウス相手によく言えたものだな」 セリスの台詞を一笑に伏し、視線をセリスに向けると凄まじいまでの威圧感を放った。 「くっ…」 セリスや聖戦士たちは必死でそのプレッシャーに弾き飛ばされないように脚を踏ん張った。 「試してみるか? 『兄上』」 ロプトウス 邪悪な波動を放ち、笑みを浮かべながら、ユリウスはセリスに挑発するかのような視線を投げかけた。 「くそ…!」 ロプトウス セリスが挑発に乗り、ユリウスに斬りかかりかけたそのとき。 セリスに護られ、後ろに控えていたユリアがセリスの背にしがみつき、叫んだ。 「お待ちください! セリス様!」 「……ユリア?」 逆上していたセリスはユリアの声に我を取り戻し、振り返った。 ロプトウス ユリアの存在に気づいたユリウスは動揺し、ちっと舌打ちをして、 「マンフロイめ……、しくじったか…」 セリスたちに聞こえない程度の苦々しい声色でそう呟いた。 ――――― ……ユリ…ア… …良かっ……た……生き…て…いたんだ… 僕の大切な…双子の妹…… ――――― ロプトウス ユリウス イシュタルの死によりユリウスの内で消滅しかけていた精神が微かに反応した。 「私に、兄と…ユリウスと話をさせてください! お願いです!!」 「駄目だ! あいつはもうユリウスじゃない、ロプトウスなんだ」 セリスがユリアの肩を掴んで必死で止めようとしたが、ユリアは頑として聞き入れなかった。 「いえ、あれはユリウス……私の兄です。」 ユ リ ウ ス そして呆然とするセリスの手を抜け、ロプトウスに優しく語りかけた。 「…お兄様」 かお 柔らかい表情で、ゆっくりとユリウスに近づいていく。 お 兄 様 「お兄様、聞こえるでしょう? ユリウス」 ――――― …ユリア…ユリア…… ――――― ロプトウス ロプトウス ユリウスの内でユリウスが徐々に大きくなり、ユリウスが悶え苦しみだした。 「お兄様……」 ユリアがユリウスにそっと触れようとしたその瞬間、 「うがぁぁぁぁぁ……!!!」 ロプトウス ユリウスが狂ったかのように身体を振り乱し、ユリアを弾き飛ばした。 「きゃあぁぁ!!」 「ユリアぁ!!」 吹っ飛ばされたユリアは、間一髪でセリスが抱き留めた。 ロプトウス ぜいぜいと息を荒げ態勢を立て直すユリウスを見て、セリスはユリアに言い聞かせた。 「わかったかい、ユリア。あれはもう、ユリウスじゃない。ロプトウスなんだ」 ――――― ユリア……僕を…殺して……… ――――― ――――― 僕は、もう誰も殺めたくない……… ――――― こえ ユリウスの想いを聞いて、ユリアは目を閉じ、一雫の涙を流した。 一瞬だけ俯いて見開いた瞳には、もはや一寸の曇りも無かった。 ロプトウス ナ ー ガ そしてユリウスに真っ向から対峙すると、光の魔導書を身に纏い、ゆっくりと右腕を振り上げ、呟いた。 お 兄 様 「おやすみなさい……ユリウス…………」おしまい ![]()